「子はかすがい?」(その2)

富士三合目

2011年05月18日 17:41

5/2(月)の本ブログの続きです。

ジョン・フォード監督作品「リオ・グランデの砦」の中で、15年も別居している夫婦には何らかの理由があるはずですが、前回はただ夫の騎兵隊隊長(カービー中佐:ジョン・ウェイン)が単身赴任でメキシコ国境の砦に赴任し、妻(キャサリン:モーリン・オハラ)と息子(ジェフ:クロード・ジャーマンJr)は東部に残ったとしました。その顛末を紹介します。

これには深い事情があって、南北戦争時、夫は北軍の軍人(大尉)、妻の実家は南部(シェナンドー谷)の農園で、夫の上官(シェリダン将軍)から作戦上農園を焼き払う様命じられ、止む無く命令に従った訳です。命令によって実際に火を放ったのは、夫の部下の軍曹(クイン:ヴィクター・マクラグレン)ですが、彼はその後ずっと隊長に従って辺境に来ています。妻はその時、乳飲み子を抱いて火の放たれる様子を見守っていました。そんなことから戦争が終わっても同居出来る訳がありません。妻は夫とその部下の軍曹を「放火犯」と呼んでいます。

さて、その息子は15年後、折角入った陸軍士官学校を退学してしまいますが、その理由は「数学」で落第点を取り、その追試験を受けなかった(追試験に受かれば復帰出来たと妻は言っていますが)ためです。何か思うところあって、辺境の騎兵隊に二等兵でやって来ました。父親の隊長と会って、この騎兵隊に来た理由を問われ、彼曰く、「私はこの騎兵隊に志願したわけではなく、アメリカ陸軍の騎兵隊を志願したら、ここに配属になった」と言っています。(この時点では、決して父親を慕って来た訳ではないと言いたかったのでしょう。)

父親である隊長は新兵みんなを集めて、「地獄の特訓」をやること、そして、もし落伍して逃げ出すことがあれば、徹底的に探して見つけ出し、処刑する」と宣言します。(しかし、本心では息子のことが心配ではらはらしながら見守っています。)

そんなところに妻は東部から息子を連れ戻しに辺境にやって来ました。部下のクイン軍曹(今は曹長)は奥さんに会った途端、「放火犯」と言われて小さくなってしまいます。彼にとっても、命令とは言え、上官の奥さんの実家に火を放ったことは「痛恨の極み」として、一生負い目を感じているのです。

この夫婦、本当は未だお互いを愛していることはちょっとした素振りで判ります。しかし、お互いの誇りが和解を妨げています。息子はその二人の誇りを受け継いだ子供なのです。息子と再会した母親との間でこんな会話があります。

(母) 私と一緒に(東部へ)帰りましょう。
(息子) いやです。帰りません。私はこの騎兵隊でやると決めたのです。
(母) 父親に似て頑固で誇り高いのね。
(息子) 母親にも似ています・・。

(息子) お父さんはどんな軍人なのでしょうか。
(母) 立派な軍人よ・・。

これだけの会話で全てが飲み込めてしまいます。それ以上の説明は必要ないでしょう。

砦の周辺は先住民(インディアン)のほう起があって、厳しい状況となりますが、息子(ジェフ)やその同僚達(元南軍兵士)の目覚しい活躍等もあり、何とか無事収まって来ます。そしてラストは武勲のあった息子や同僚達が表彰され、騎兵隊の閲兵行進があって、その行進曲は南軍の「GOD SAVE THE SOUTH !!」で、妻キャサリンはわだかまりが解けた顔で嬉しそうにパラソルを曲に合わせてくるくる回します。その曲を選曲したのは、「シェリダン将軍」でした。(南北戦争でキャサリンの実家に火を放つ様命令した将軍)

映画の中で面白いやり取りもあります。
1)キャサリンとクイン曹長が15年ぶりに再会する場面
(曹長) 奥様、お久しぶりです。
(キャサリン) あら、北軍は放火犯が中佐(夫のこと)になったり、曹長になれるのね。 (曹長ギャフンとなりションボリしてしまう)

2)砦の軍医(ウィルキンズ医師:チル・ウィルス)にクイン曹長が言うセリフ
(曹長) あなたは医者で学があるから教えてくれ。「放火犯」とはどう言う意味か?
(医師) 自分の利益や趣味で建物に火を放つ人間のことだ。
これを聞いてクイン曹長は非常に嬉しそうな顔をします。そして
(曹長)この手で焼いたのだ。その棒でこの手を殴ってくれ・・。
医師はそれまでナイフで削って作っていた何かの棒で、黙ったまま力一杯曹長の手の平を殴り、棒が真っ二つに折れ飛びます。残った棒を何事もなかった様に又、削り始めます。
(曹長) !! ・・・。 黙って顔をしかめながら手を振ります。

3)中佐がシェリダン将軍にコーヒーを入れる場面。(伏線として、以前将軍が中佐にコーヒーを入れてやり、「それにしてもこのコーヒーは不味い」「そのうちに美味いコーヒーが飲める日が来るだろう」と言うやり取りがありました。)
(中佐) コーヒー飲みますか
(将軍) 黙ってうなずく。 
(中佐) コーヒーを入れながら「美味いですよ!」
実はこのコーヒーは(多分)キャサリンが入れてくれたコーヒーでしょう。

まだまだいっぱいありますが、長くなるのでこの辺で。さようなら


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