腰を据えて「いとしのクレメンタイン」
「いとしのクレメンタイン」は1946年ジョン・フォード監督作品の西部劇「荒野の決闘(原題:いとしのクレメンタイン)」の題名であり、又、映画の中で主題歌的に使用されて有名になった、アメリカ民謡です。(歌自体は1880年頃からあった様です。)日本では元歌の内容とは全く異なる「雪山賛歌」と言う替え歌になって知られています。
1849年にカリフォルニアのゴールドラッシュに駆けつけた金鉱掘りの一群を「フォーティナイナーズ:49ers」と呼びますが、その一人の49erが娘のクレメンタインを連れて来たのです。ところが、クレメンタインはある日激流に落ちておぼれて亡くなってしまいます。それを嘆き悲しんだ恋人?が「Oh My Darling Clementine」と歌った悲しい歌ですが、ジョン・フォード監督は、この映画のラストで現世に生きているクレメンタインに「I ’ll be loving you forever, Oh My Darling Clementine」と、替え歌にして「永遠に君を愛するよ、いとしのクレメンタイン」と将来に希望を託しているのです。
この映画は詩情豊かな西部劇として、不朽の名作の一つに数えられていますが、特にラストシーンの、馬上のワイアット・アープがかの地に残って教師になると言うクレメンタインに 「Ma'am, I sure like that nameーClementine!!」と言って去って行く姿に重なって、前記の「I 'll be loving you forever, Oh My Darling Clementine・・」と余韻を残してハーモニカとカウボーイコーラスが流れるのです。
このセリフをどう解釈するか、映画では字幕に出ますが、読まれた皆さんで味わって頂きたいと思うのです。私はこのワイアット・アープがクレメンタインに言ったセリフを何十回聞いても、「like that」の部分が聞き取れなくて、英字台本を最近あるブログで、詳しい方に教えて頂き、何十年ぶりに漸く全体を理解することが出来、改めて名作だなあと感じ入った次第です。
名作には下手な解説を加えない方が良いのですが、「悲しみの歌」を「希望が感じられる歌」に替えて、永遠に人々の心に残るものにした、ジョン・フォード監督に敬意の念を抱かずにはいられません。1946年と言う、第二次世界大戦(太平洋戦争)終結直後の作品であり、「いとしい人」を永遠に亡くして悲嘆に暮れていた多くの人達にも、生きる希望と力を与えてくれたと私は信じます。
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